27人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「点滴の時間ですよ」
看護士さんが点滴の容器を持って病室に入って来た。
「二人で散歩でもしてきたら?」
お袋は気を利かせたのか、俺とみぃの顔を交互に見て微笑んでいた。
「仕方無い、相手してやるよ」
みぃがそう言いながら病室を出て行った。
「また、後で来るし」
お袋にそう言うと俺も病室を後にした。
病院の売店で缶コーヒーを二本買って中庭のベンチに腰掛けた。
「はい」
「ありがとう」
俺はみぃに缶コーヒーを手渡した。
みぃの素直な言葉に表紙抜けしそうになった。
その言葉に照れ臭さと妙な緊張感が胸の中でどきどきを連れて来た。
みぃは缶コーヒーを手のひらに収めると目の前の桜の木を眺めていた。
まだ硬い蕾を見つめるみぃの横顔にどきどきしていた。
「叔母ちゃんを独りにしちゃダメだよ」
缶コーヒーを開けながら、みぃがぼそりと呟いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!