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このまま、また何も言えずにソウちゃんと離れ離れになるのかと、胸を締め付けていた。
あの日、ちゃんと言えば良かったと、さっき病室で後悔したばかりなのに、彼氏が居ると嘘までついた自分に嫌気が差していた。
「草太はみいちゃんのことを好きだったんだよ」
叔母ちゃんの言葉が勇気を運んでは来るものの、言葉にする勇気は無かった。
ソウちゃんのことが好きだと……。
今でも私のこと、好き? と、聞けなかった。
時間だけが過ぎていた。
私の横で、何も言わないソウちゃん……。
ソウちゃんの横で、なにも聞けない私……。
目の前の桜の枝が微かに揺れている。
それはまるで、待ち遠しい春を早く来いとばかりに呼んでいるかのようだった。
春よ来い、かぁ……。
あの日の春は過ぎ去ったんだ。
もう一度、春よ来い……。
「よしっ!」
そう胸の中で決心したんだ。
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