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一旦マンションに戻ってから着替えを適当に鞄に詰め込んで、川上村へと車を走らせた。
「遅くにすみません」
俺は加藤営業課長に電話を掛けた。
「どうした?」
「お袋が倒れたみたいで明日休みを頂きたくて」
「そうか……、わかった気をつけて行けよ? お袋さん大事に至らなければいいんだが」
課長も二度目の事とあって、心配してくれていた。
電話を切って高速道路に入ると東京方面へと車を飛ばした。
カーラジオを消して、あの頃を思い出していた。
土の匂いが嫌いだったあの頃……。
元々身体が弱かったお袋を川上村に独り残して、大阪へ旅立った事を後悔し始めていたんだ。
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