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レタス農家の年収は五倍から十倍に膨れ上がり、専ら教室の話題はテレビゲームのソフトの話しとモトクロスの自転車の話しで盛り上がったいた。
そんな話題についていけない俺の理由を、未だにキャベツを栽培しているからだとレッテルを貼られ『キャベツ』と呼ばれるようになったんだ。
「そろそろレタスに切り替えた方がいいよ。農協の借金だってあっという間に終わっちまうぞ」
農協の人が頻繁に俺の家に来ていた。
「あんなペラペラした野菜など直ぐに廃れてしまう、ずっとやってきたんだ……、一反もない小さな畑からずっとやってきたんだ」
親父は頑なにキャベツ栽培を止めようとはしなかった。
その度に農協の人は溜め息を吐いて帰って行った。
大人しいお袋は親父の横で何も言わずに、ただ聞いているだけだった。
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