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途中サービスエリアに車を停めて缶コーヒーを買って一口飲むと、また車を走らせた。
「お袋、ごめんな……、身体が弱いの知ってるのに」
そう呟きながら車のハンドルを握り締め直した。
そしてまたあの頃を思い出していた。
「畑はどうするつもりだ?」
「……」
親父が他界して四十九日が過ぎた日に農協の人がお袋に相談を持ち掛けていた。
親父は俺が高校に入学した夏に逝ってしまった。
夏の刺すような陽射しに負けたのか、過労死だとお袋から聞いた時には、涙は溢れて来なかったんだ。
キャベツ畑を残し、土の匂いも置いて逝った親父をまだ恨んでいた。
逝っても尚、小馬鹿にされるんじゃないかと……、俺もお袋も、そして逝った親父も……。
あの頃の俺は、親父とお袋の気持ちなど解る筈も無かった。
ただ、土の匂いを避けていただけだから……。
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