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土の匂いを避ける為だけに、俺は高校を卒業すると同時に大阪へと旅立った。
土の匂いから逃げる為に川上村から成る可く遠い都会へと向かったんだ。
身体の弱いお袋と土の匂いを置いたまま……。
親父が逝ってから農協の人や作蔵叔父さんにひつこく説得されたお袋はキャベツ栽培を止めてレタス栽培へと転向した。
農協への借金が増えた。
「心配はいらん、二年も有れば借金は終わる」
農協の人は自信満々に、そうお袋に言っていた。
お袋は殆ど独りで慣れないレタス栽培に必死だった。
お袋は俺に手伝えとは、一言も言った事は無かった。
日焼けしたお袋の顔が脳裏を掠めると、行き交う車のヘッドライトを滲ませていた。
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