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【序症】
暗闇に映えるは狐の面。
黒巫女装束は夜に溶け、紅い髪は尾のように翻る。
少女は東京の煌めきの影に身を隠し、ビルからビルへ天狗のごとく跳び移った。
「モモよ、よもや“鬼”は弱っておる」
黒巫女装束の彼女の台詞に、対照的なゴシックドレス姿の少女は応える。
「はい、エス様」
彼女らの十メートル先には、これまた人間らしからぬ身体能力の男が東京の空を跳び回っていた。
……が、次の瞬間。
ゴシックドレスの少女の手から放たれた“気圧の歪み”が竜巻となって男を絡め取る。
「慎むが良い。御主の“イド”は妾が喰ってやるぞ」
“エス”はそう言って、面の奥でニヤリと笑った。
「さあ。汝の呪いは美味いかえ?」
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