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冬が目前に迫る11月のこと。
肌寒い静かな夜の帰り道だった。
不意に手を引かれた篠塚美咲は、瞬間恐怖にすくんだ体で、おずおずと背後を仰いだ。
「あなたは……」
認めた人物に、頭が真っ白になる。
背筋がサーッと冷たくなって、激しい動悸に襲われた。
メガネの奥の瞳を見開いて、美咲はおもむろに口を開いた。
「同じクラスの……」
「委員長、ここで何をしてるの?」
落ち着いた声音と共に、浮かべられた淡い微笑み。
美咲の手を取り引き留めたのは、クラスメイトの檜佐木壱だった。
会話をしたのは、これが初めてに違いない。
クラスメイトだと把握できたのは、美咲が学級委員をしていることと、彼が学年でも有名な人物であるためだった。
どうして、こんなところにいるのだろう。
湧いた疑問を呑み込んで、大丈夫バレてない、と自身に言い聞かせる。
そして、美咲は壱を見上げた。
「檜佐木君こそ、どうしてこんなところにいるんですか?ここは学区外ですよね?」
「質問してるのは俺でしょ?」
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