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大阪城に戻った二人は、直ぐに半兵衛の私室まで足を運んだ。
少年はぐったりとしていて、体温は驚くほど冷たいままだ。
死んでいるのではないか、と思いながら、三成は先を急ぐ。
半兵衛の私室に入ると、彼は丁度茶を飲みながら書き物をしているところだった。
「お帰り、二人供。……何か妙なものを拾ってきたみたいだけど?」
二人の無事な帰還を喜んだ半兵衛だったが、三成が抱えている少年を見て目を細めた。
立ち上がり、少年の頬にそっと手のひらを当てる。
その瞬間、半兵衛の表情がきゅっと険しくなった。
「家康君、悪いけど女中に頼んで湯を持ってきて貰えるかい? それから、火鉢も幾つか頼む」
「えっ?」
「三成君は、その子を此方の部屋へ。僕が布団を出すから、其処に寝かせてあげて」
「は、はい」
てきぱきと指示する半兵衛に、よくわからないまま二人は従った。
近くの空いている部屋に敷いた布団の上に、少年を横たえさせる。
その小さな体には全く力が入っておらず、冷たいままで白い肌と合わせて、まるで人形のようだった。
やはり死んでいるのでは、と思って口許に手をやると、辛うじて呼吸をしているのがわかる。
家康が持ってきた火鉢と湯が入った桶を置けば、部屋の中はじんわりと温かくなった。
いつの間にか半兵衛が呼んだ薬師が、少年を診察している。
部屋の端に座って大人しく待っているしかない、三成と家康。
暫くして、診察を終えた薬師は大きく息を吐く。
隣で、家康が小さく体を強張らせたのがわかった。
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