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重い沈黙を破ったのは、半兵衛だった。 「其れで、この子は一体どうしたんだい?」 すっと目が細められる。 先ほどまでとは、雰囲気が全く異なっていた。 言うなれば、『軍師の顔』になっている。 顔を見合わせる、三成と家康。 「えっと、それが……」 家康が、森で起こったことを始めから説明した。 酷い吹雪に合ったこと。 吹雪が不自然に止んでいるところがあり、其処に満開の桜が立っていたこと。 桜のすぐ近くに、此の少年が居たこと。 少年が意識を失うと同時に、桜の花が消え失せてしまったこと。 話している間にも、あれは夢だったのではないかと疑いたくなるような内容の話だ。 半兵衛は其らを、興味深げに目を光らせて聞いていた。 「なるほど……其の桜が、噂の桜の木だったようだね」 それに、と。 半兵衛の鋭い目が、布団に寝かされている少年を捉える。 少年は、呑気にすうすうと健やかな寝息をたてて眠りこけていた。 体が幾分暖まったお陰か、幼子特有のふっくらした頬に赤みが指し始めている。 「此の子が関わっているのは、先ず間違いないだろう」 「半兵衛殿……っ」 「心配しなくても、直ぐに殺したりはしないよ」 思わず腰を浮かせた家康が喋り出す前に、半兵衛はきっぱりと言う。 彼の桜の木と関係があるならば、話を聞かねばなるまい。 とりあえず其れまでは殺さない、というだけだ。 家康は、心底安心したようにほうっと息を吐く。 だが次の半兵衛の言葉に、再び目を見開く羽目になった。 「じゃあ、二人とも。後は頼んだよ?」 「えっ?」 「半兵衛様。恐れながら、其れはどういう意味で……?」 珍しく、数分に渡って空気だった三成が、探るように半兵衛の顔を見返した。
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