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することもないので、三成は相変わらずすやすや眠っている少年を観察することにした。
なるべく音を立てないようにしながら立ち上がり、少年の直ぐ側に胡座をかく。
そっと、手の甲を少年の頬に触れさせてみた。
冷たかったのか、びくっと首をすくませる少年。
「っ!」
三成も驚いて、手を引っ込めてしまった。
すると。
「……ゃ、だ……」
「……?」
少年の手が何かを探すように、宙をさ迷い始めたのだ。
一体どうしたというのだろう。
「……やだ……」
「……何が嫌なのだ」
答えは返ってこないだろうと思いつつも、声をかける。
少年の閉じた目蓋から、涙が一筋零れ落ちた。
「いか、ないで……」
「………………」
何が言いたいのかよくわからないが、どうやら手を離されたのが気に食わなかったらしい。
仕方なく、三成は右手で少年の手を乱暴に掴んだ。
小さい。
最初の時よりずっと温かくなってきたそれは、三成の手の中にすっぽりと収まってしまった。
安心したように、顔を綻ばせる少年。
三成の手を、抱き締めるように自分の胸に寄せた。
不意打ちだったため、前のめりになって体勢を崩してしまう。
左手を畳の上について、どうにか倒れるのだけは回避した。
無理矢理引き剥がそうとしたが、少年はむずがって離そうとしない。
「何なんだ、こいつは……」
訳がわからず顔をしかめていると、
「やれ、凶王が童の子守か」
するすると音も立てず、何者かが部屋に入ってきた。
輿に乗り、全身を包帯で覆い隠している男。
人付き合いが得意とは言えない三成の、数少ない友人と呼べる男。
刑部こと、大谷吉継だった。
「各国の武将が聞けば、腹を抱えて笑うか、目を丸くするであろ」
しきりに、その喉に引っ掛かるような特徴的な笑い声を上げている。
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