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雪がしんしんと降り続ける山道。
傾きかけた陽に照らされ、木々にのし掛かった雪が光を反射して輝いている。
空気はきんきんに冷えており、息を吐き出せばたちまちそれは白くなる。
深呼吸などすれば、喉の奥から凍りついてしまいそうほど寒かった。
そんな山道を、あちこちを見回しながら歩いている二人の青年。
太陽と月という言葉がしっくりくるような、対称的だが何処か似た雰囲気の二人だった。
一人はだぼっとした緩めの黄色い服を着ており、必要最低限といった感じの防具を身に付けている。
両手には頑丈そうな、守るためではなく攻撃の為のものであろう籠手が装備されていた。
体格はがっしりしているが、顔に浮かべる人懐こい笑顔のお陰か、嫌な威圧感はほぼ感じられない。
そして、その隣を此れ以上無いくらいの仏頂面で歩くもう一人の青年。
裾が広がった紫色の陣羽織を着ており、その下の体は男にしては随分細い。
黄色い青年の方の体格がいいせいで、それが更に際立っているようような気がした。
そして左手には、ずっしりと重そうな長い刀が握られている。
「思ってたよりかなり寒いなぁ……三成、お前平気そうな顔してるけど寒くないのか?」
黄色い方が尋ねると、紫色の方はフンと鼻を鳴らし、
「寒くなどない。無駄口を叩いている暇が有るならさっさと歩け。そうでないなら凍え死ね」
と冷たい言葉を飛ばした。
黄色い方を睨むその眼光を見た者は、たちまち身をすくませ逃げ出してしまうだろう。
しかし、それでも黄色い方は嫌な顔一つせず、
「そんなこと言うなよ」
と笑うだけだった。
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