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「何でそんなに怒ってるんだよ」
黄色の方が問えば、
「貴様の案内で来たせいで迷っているのだ、怒らずに居られるか! 半兵衛様の命でなければ、疾うに残滅している!」
刀に手をかける紫。
黄色の方は、反論ができずに肩を竦めるだけだった。
黄色が地図を見間違えて、現在進行形で迷っているのは事実であるから。
そのおどけた様子が、紫の神経を更に逆撫でする。
「貴、様……っ! やはりこの場で切り刻む! 即刻首を差し出せぇぇぇっ!!」
「そんなに怒るなよ三成。怒りすぎると頭の血管が切れるぞ」
「斬られるのは貴様だ、いえやすぅぅぅぅぅぅっ!」
その大声に驚いたのか、近くの木に留まっていたであろう鳥が慌てたように飛び去っていった。
黄色が逃げないのが不思議なくらい、紫は殺気をみなぎらせて怒鳴っている。
黄色は慣れているのか、怖くないのか、それともなにも感じないくらい鈍感なのか。
何れにせよ、逃げるような素振りは全く見せなかった。
まぁ、ここで背など向けたらあっと言う間に首と胴体が永遠におさらばする羽目になるだろうが。
紫の怒りを代弁するかのように、風が恐ろしい勢いで二人の間を吹き抜けていく。
いつの間にか雲が厚くなっており、辺りは薄暗くなっていた。
恐らくは、間もなく雪でも降り始めるのだろう。
積もった雪が、血で赤く染まっていないことを願うばかりだ。
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