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紫の方の名は、石田三成。
黄色の方の名は、徳川家康。
二人共、豊臣秀吉率いる豊臣軍の一員である。
三成は秀吉の左腕と言える人物であり、秀吉が『覇王』と呼ばれるのに並んで『凶王』として名を馳せている武将だ。
当然、秀吉からの信頼も厚い。
一方家康は、最初から豊臣軍の一員だった訳ではない。
元々は三河という国を治める国主であった。
少し前にあった『小牧･長久手の戦い』と呼ばれる戦において、秀吉に膝を折ったのである。
しかし、三成は降伏にしては早すぎると考えていた。
徳川軍にはまだ戦力もあったし、士気が下がっていたわけでもない。
それでも家康は、降伏しては秀吉に従う道を選んだのだ。
以前理由を尋ねた時、
｢これ以上、両軍とも『絆』を失ってはいけないと思ったんだ｣
と、綺麗事を大真面目な顔で返してきた。
馬鹿馬鹿しいと、思った。
そんな綺麗事の為に膝を折れる人間など、果たしているのであろうか。
しかし一緒に過ごすうちに、いつしかそれは｢家康らしい｣という言葉で片付けられることがわかったのだった。
何にせよ、三成にとって家康は筋金入りの腹立たしい馬鹿という認識でしかない。
それ故に冷たくあしらっているのだが、生憎家康には通じていないようだ。
さて、そんな二人が何故こんな雪山に居るのかと言うと。
それは、数時間前に遡る。
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