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吹雪はますます強くなる。 風の抵抗を受けないように姿勢を低くしながら、三成は走っていた。 半兵衛がわざわざ自分達の為に用意してくれたものを無くすなど、自分は何をやっているのだろうか。 その時、視界の端に何やら白いものがちらついた。 「っ!」 よくわからないが、とにかく手を伸ばして掴んでみる。 それは何と奇跡的に、半兵衛の地図だった。 ほっと息を吐く三成。 そこで初めて、家康の声と気配が消えていることに気がついた。 「あの馬鹿が……。はぐれたら捨て置くと言っただろうか……!」 はぐれたのはお前だろうと突っ込む者が、残念ながらこの場にはいない。 三成は苛々した様子で、辺りを見回してみた。 相変わらずごうごうと雪が物凄い勢いで行き来しているのが見えるだけで、後は何も見えない。 三成は忌々しげに舌を打ち、降り積もって深くなった雪を掻き分けながら歩き出した。 とにかく風を凌げる所に行かなくては、このまま凍死してしまう。 既に体は極限まで冷えており、意識は虚ろだった。 それでも容赦なく、吹雪は三成の体を冷やしていく。 進んでいるのか戻っているのか、はたまた止まっているのかさえ定かではない。 遂に足が縺れ、三成は雪の上に倒れ込んでしまった。 がしゃん、と甲冑が冷たく重い音を立てる。 もはや立ち上がる気力さえ、今の三成にはなかった。 まさか、こんな所で死ぬのか。 満足に秀吉と半兵衛の役に立てぬまま、ここで。 「う……っく……」 死ぬわけにはいかない。 その思いだけが、三成の体を突き動かしていた。 這いつくばりながら、ずるずると前に進んでいく。 その時、突然さぁっと視界が晴れた。 そして三成の目に、有り得ない物が飛び込んできたのだ。
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