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私の幼い頃、父は紀州藩主から将軍になった。
私の母は私が生まれた瞬間に死んだ。
私は、幼い頃より病で人より言葉を上手く話すことは出来なかった。
しかし、父はそんな私に愛情を注いでくれていた。
「そなたは、お須磨によく似ている。なくなった母の分もよがずっと守っていくぞ」
よくそんな事を言っていた。
その言葉通り、父は私を江城へと招いた。
父の言いつけで私はずっと大奥にいた。
周りの目を避けていた。
弟の小次郎は文武に長けていた。
小さい頃より武士として本当に優秀だった。
私はというと、文学や芸能が好きで特に猿楽にはまっていた。
武士の子なのに剣術はからきしダメで体も細く、白い。
周りからみたら、女好きの道楽息子。
よく女子のようだとからかわれた。
私はそれを耳にするたびに震えた。
いつか自分が女だとばれてしまいそうで怖かった。
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