467人が本棚に入れています
本棚に追加
/392ページ
「うけたまわりました、我が君」
唇を微笑ませ、恭しく頭を下げながら言った、その言葉。
今日ほどこの言葉を特別に感じた事はないと少女は思う。
目の前を蒼色の渦が、緋色の花弁が舞う。
一陣の大きな風が。
少女の長い髪を、ざあっと凪いだ。
視界が晴れて。
少女の目に映ったものは、それまで見た事のない光景だった。
あまりに見た事がなさすぎて。
少女はその場に膝をついてくずおれた。
気が付くと、ぽたりぽたりと大粒の涙が流れていた。
最初のコメントを投稿しよう!