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「こ、これ以上何かしたら、泣きますよ。」
自分の逃げ場だけでも確保したかったために、ありがちなウソを付く。
泣くって、最終手段に使うやつだよね、女の子にとって。
私がそう言ってすぐに、彼の手が止まる。
もしかして、効果あったかな?
別に泣きはしないけど、一応言ってみただけだし。
「今は我慢しとくよ。ももが嫌ならしないし。
第一、泣かせてまでお前をからかいたくはない。」
こういうのは、素直に応じてくれるんだ。
「遊李って、優しいよね。」
「お前にだけな。他のやつには、こんなに慎重にならねぇよ。
お前は大事だから、優しくしてぇんだ。」
また、心臓が締め付けられる痛みが襲う。
あぁ、これほど私の事を想ってくれているだ。
それを、実感するのと同時に恐怖も感じる。
好きを自分の中で、認識してしまう恐ろしさ。
新しい自分になったばかりの私には、荷が重すぎる。
もしまた、この人も、私の事を裏切るんじゃないかって。
そんな風に、思ってしまう。
絶対という言葉を、私はまだ信じられないから。
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