平家物語

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葵が逃げるようとすると青年は引き寄せて抱き締められてしまう。離れようとしているのに逆に近づいてきた青年を葵は睨み付ける。 青年は満面の笑みを浮かべていた。その笑みに葵は身をよじり、再び逃げようとする。 その時、どさり、と奇妙な音が葵には聞こえたような気がした。入り口には床に倒れた彼女たち。その中で悠然と立っていたのは…… 「菫さん!!」 葵の声に振り返った菫の瞳は藍色。片手に一枚のタロットカードを持っている。青年は顔をしかめ、軽く舌打ちをする。何かを呟くが葵には聞こえない。 「…迷い込んだ天使さんがその子に何のご用かしら?」 かつん、かつんと青年の前まで歩いてきた菫は持っていたタロットカードを青年に見せつける。そのカードに描かれているのはラッパを吹く天使が逆になっている。
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