平家物語

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「逆位置の審判が示すのは……過去の後悔、未練よ」 青年が一瞬、目をカードに向けた時、菫は青年の横腹を思いっきり殴る。よろけた青年の腕から葵が抜け出すと菫が手を差し出す。 葵が手を握り、菫が走り出す。青年は呻きながらも後を追って来ている。ふと、花山さんを脅していたもう一人の青年を思い出し、葵は引き返そうとする。 「花山さんなら大丈夫よ。あんな子に負けるような人じゃないから」 今、青年はまだ見えないが、青年は徐々に跡を追って来ているのだ。ここで止まる訳にはいかない。 菫は花山さんを信頼しているような、そんな瞳で葵を見ていた。小さく頷いた葵の手を握り締め、菫はまた走り出す。 菫が向かっているのは大体の位置から図書室だろう。そこに何を仕込んだのだろうか。葵には菫が逃げているだけに見えない。 ようやく図書室に着いた。葵は息が切れ、肩で荒い呼吸を繰り返すが菫は平気なようだ。
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