平家物語

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「くそっ!………さっきの女…許さねぇ!!」 青年はずきずきと痛む脇腹を手で押さえながら、葵と菫が走っていった道を小走りで進んでいく。だが、脇腹を押さえて小走りでいくのは簡単なことではない。 直ぐに二人を見失った。足跡も聞こえない。完全に逃げられたようだ。青年は舌打ちをして、ふと自分が立っている周りを見る。 「ここかぁ?」 図書室と書かれたプレートが扉の上に付けてある。確かに隠れるにはうってつけの場所だ。青年はにやりと笑みを浮かべ、扉を開いた。 なんとも古臭い、例えばタンスのような独特な臭いが鼻を刺激する。図書室は好きではない。この臭いがどうしても好きにはなれない。 目の前には何故か脇腹を殴った忌々しい女が堂々と椅子に座り、机の上にカードが並べられていた。青年は早足で机に近づくと女を睨み付ける。 「あんた……さっきはよくもやってくれたなっ!」
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