平家物語

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「人の人生を一言で表すのは意外と難しいことですわね…」 ぱたり、と本を閉じて、真っ青に染まる空を眺める一人の女性が居た。 空調の微かな風に揺れる黒髪、空を見つめる瞳も黒だか、時おり藍色にも見える。 水色のゆったりとしたニットの裾からは生地に厚みのあるモカのミニスカートがほんの少しだけ見えている。 「あら、もう1時ね………」 柱時計は1時を指している。途端にぐぅと微かに腹が鳴り、女性は本をリボンの付いた鞄にしまうとそのまま人気のない図書室を出ていった。 このどことなく不思議な雰囲気を漂わせる女性の名前は神月菫(かみづきすみれ)。この夕鈴大学、国文学科の一年生である。
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