平家物語

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朱の華が指定してきた場所は人気のない古びた倉庫。美千留がバイクを止め、ひらりと降りる。途端にわらわらと蟻のように朱の華の団員たちが倉庫から出てくると美千留を囲む。 「あんたも馬鹿だねぇ…簡単に渡すと思ってたのかい?」 美千留の仲間の首元にナイフを突き立て、顔を歪めて微笑む朱の華のリーダー。その顔には優越感がにじみ出ていた。美千留は手ぶら、一方、朱の華の団員たちは何かしらの武器を持っている。 「美千留、動くなよ。動いたらこの子の首が飛ぶぜ。お前ら、殺りなっ!」 美千留は動かない。否、動けないのだ。何よりも仲間を大切にする蒼の剣にとって人質が彼らの動きを止める有効な手段だ。団員たちの攻撃を受け続け、美千留は直ぐに地に伏した。 「あっはっは!!見ろよ、この美千留の無様な姿をっ!蒼の剣のリーダーとは思えねぇ」 仲間が美千留の名を叫び、団員の一人が美千留の頭に鉄パイプを降り降ろす。もう、終わりだ。呆気ない人生だったが、仲間を守るために死ねたなら美千留に悔いはない。
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