平家物語

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「菫ちゃんの迎えに来ただけだ。まぁ、時間が空いてるからあんたの話を聞いてやるさ」 津川が美千留の横を通り過ぎ、食堂の椅子に腰かけると煙草に火をつけて煙を吸う。ふぅと息を吐くと煙草の臭いが食堂に充満していく。 「大学内は禁煙だよ、津川さん。今日は休日だけどルールは守って欲しいね」 美千留は食堂の入り口から調理場に移動する。火をつけたコンロに水の入ったやかんを置き、お盆の上にマグカップを2個置いた。 「元暴力団のリーダーが偉そうに言うことじゃないか。他のやつもきちんと仕事してるのを見るとあんたの教えがはっきりと分かる気がするな」 しゅんしゅんとやかんが微かな音をたてる。美千留は暴力団を解散する際、団員たちに会社のルールを守り、仲間を思いやれと言ったのが今も続いているらしい。
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