平家物語

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津川と美千留がしんみりと話している時、東京警察署では大量の書類を整理している一人の若者が居た。 「えっと……こっちの書類はそこで…これは?」 黒のスーツを着た細身の若者は手にした書類を見て、首を傾げた。その書類は何故か棚と棚との間に挟まれていたのだ。 「平先輩っ!この書類ってどこに入れたら良いんですか?」 偶然、何かの書類を探しに来ていた平警部が若者の側へとやって来る。貫禄のある体で角刈りにした髪、体とは違うほんわかとした雰囲気をまとう警察署では珍しい存在である。 「おぉ、瀬戸か。書類整理ご苦労さん。どれどれ…」 平は瀬戸から渡された書類に目を通した瞬間、表情が凍りついた。瀬戸もその表情に違和感を感じ、極秘書類を見つけてしまったのではないかと不安に段々となっていく。 「……これは処分してくれ」 いつもより低い声で呟く。平は瀬戸に書類を渡し、必要な書類を見つけて早々と資料室から出て行った。温厚な平が感情を露にするところを瀬戸は今まで見たことがない。
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