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瀬戸が警察署を出て、ビルの間を歩いていく。ビルがそびえる街の中でひっそりと佇む棚橋医院の前に棒つきの飴玉を舐める、白衣を着た角刈りの男性が立っていた。
「よぅ、あんたか。で、何の用だ?」
飴玉を口から出し、瀬戸に向かって話しかけるこの男性が瀬戸の会いたかった棚橋だ。ピンク色の飴玉がビルの間から反射する太陽の光で煌めいている。
「棚橋さん、なんで外に居るんですか?」
前もって連絡していない棚橋が外に居たことに瀬戸は首を傾げた。棚橋はタバコを吸わないので外に出ること自体が珍しいのだ。
「数日前、うちに菫が来て言ったのさ。あんたが今日、来るってな」
棚橋から甘い苺の香りがする。今日は苺味の飴玉だろう。棚橋は菫が普通に話すことが出来る三人の内の一人で菫の主治医でもある。そのためか、菫はよくここに来るらしい。
「で、何の用だ?」
棚橋は再び飴玉を口の中に入れ、瀬戸に問いかける。
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