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「津川さんの過去を教えて下さい」
瀬戸ははっきりとした口調で答え、棚橋は口の中で飴玉を転がす。しばらくして棚橋は医院の扉を開く。
「……中に入りな。長い話になる」
「あ、はい。お邪魔します」
棚橋が開けた扉を潜り、医院の中に足を踏み入れた瀬戸はしばし辺りを見回した。緑と白を基調とした待合室は仄かに柑橘系の匂いがする。人気が全くないその空間は医院というよりはマンションの一室のようでもある。
「診察室に入っていろ。後で行く」
そう言って棚橋は受付の横にある扉の中へと消えていった。
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