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待合室の奥にある扉の上には診察室と書かれていた。瀬戸が扉を開くと途端に消毒用のアルコールの臭いがする。瀬戸は中へ入ると扉を閉め、手前にある丸椅子に座る。
棚橋が奥の扉から現れ、一つのカルテを机に置くと背もたれのついた椅子に座った。瀬戸がカルテに目を向けると氏名の所に“神月菫”と書かれている。
「…高校の時から津川は真面目で几帳面。それに無口だった。まぁ、津川を変えたのはあんたの持つ報告書の事件であり、菫とはその時に知り合ってる」
「やっぱり…そうだったんですね」
棚橋の言ったことは瀬戸にも予測出来ていた。しかし、棚橋が次に言ったことは瀬戸には予想外であったのだ。
「津川と平が通報されたマンションの一室に行った時、悲鳴を聞いた津川が部屋に入って見たのは幼い菫の首を絞める優菜だったらしい」
「そんな……それじゃあ菫ちゃんは…」
「津川の姿を見た優菜はマンションから飛び降りた。幸い菫は呼吸困難による後遺症もなく、祖父母の元へ戻ることになっていたが」
ふぅとため息をつき、棚橋はまた話し出した。
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