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「そろそろ戻らないとまずいんじゃないか」
棚橋が壁に取り付けられた時計を指さす。既に菫が講義を終え、自宅へと帰っていてもおかしくない時間を秒針が指している。瀬戸は慌てて立ち上がり、ばたばたと足音を響かせながら、診察室から出て行った。
津川が警察署に帰ってくる前に瀬戸が戻っていなければ、必ず津川に怪しまれる。それだけは避けなければ。棚橋さんと話していたことがバレたら、頭の上に雷が落ちてくる可能性が高い。
瀬戸が全速力で警察署にある部署に戻るとまだ津川は来ていないようで、ホッと胸をなで下ろした途端にドアが壊れそうな爆音と共に津川が現れた。
かなり苛ついているらしく、津川は舌打ちをしてぐしゃぐしゃに丸められた紙を瀬戸に投げる。そのまま、津川は椅子に座ると携帯を触り出す。
瀬戸が紙を広げるとそこに書いてあったのはたった一文。
『菫は返してもらいましたよ』
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