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そこは木漏れ日が程よく当たり、けれど眩しすぎることのない窓際の席。
この席で読書をしたり、タロット占いをするのが菫の日常茶飯のことであった。
鞄から本を取り出し、ぱらぱらとページをめくる。書かれているのは平家物語である。菫は古典作品が大好きで、図書室で借りてはこの席で読んでいることが多い。
やがて、がやがやと話ながら食堂に入ってきた女子達が菫には見向きもせず、奥の席に座る。
花山さんが菫の席へ親子丼を持ってくると、菫は本を閉じ、親子丼を一口食べる。甘味と醤油のバランスが丁度よく、柔らかい鶏肉とよく煮込まれた玉ねぎに味が染み渡っている。
美味しい。そう思うことしか出来ないほどの美味しさが口一杯に広がり、菫はうっとりとした。
女子達はぺちゃくちゃと話していたが、ふと、菫が視線を向けると目が合った女子が一人居た。
黒髪はボブに切られており、ウェーブした黒髪が笑う時にふわりと弾む。瞳は栗色で、少し丸い目だからであろうか、全体的に親しみやすい感じが漂っていた。
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