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頭に入り込んだイメージはおぼろ気でただ、漠然としたもの。一瞬見えたのは十字架の刺青を付けた男性。
「……十字架の刺青を付けた男性には気をつけた方が良さそうね。彼が多分貴女の人生を暗転させる者よ」
葵は何の反応もしなかった。ということは知り合いではないか。
「…貴女……よく話すのね。さっきは大人しかったのに……あ、私は雪野葵って言うの」
タロットカードをしまう菫の瞳はまだ藍色のままだ。菫はふぅと息をつき、話し出す。
「今の私はね…タロットカードの意思を読み取って話している状態なの。だから、初めての人でも話せるわ………私は神月菫よ」
葵はしまわれていくタロットカードをじっと見ていたが、時おり菫の瞳を見る。まだ、藍色のままだ。
菫が急に指を鳴らすと葵は少し驚いて指をまじまじと見てしまう。その間に菫の瞳は元の黒に戻っていた。
「……それじゃあね」
菫は鞄を持ち、席を立つ。葵も着いて行こうとするが、既に菫は食堂には居らず、人気のない食堂はがらんとしていた。
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