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「……ん?『お疲れ様でした。良い駄洒落でしたよ』……だと?」
泰三がブツブツと文章を読んだ瞬間、コンピュータのスピーカーから突然「……隣の家に囲いが出来たってねぇ……へぇ……かっこいい」という声が大きなボリュームで会議室内で響かんばかりに発せられた。
「これからも、我がグループは、独自の技術も開発して……。ん……何だ、誰だ?」
会議室中はざわつき、時折笑い声も聞こえた。泰三は顔を真っ赤にしてパソコンのスピーカのボリュームを最小にした。泰三はこの声に聞き覚えがあった。そう、あの運搬のおばさんの声ではないか。泰三は頭がこんがらがり、回らなくなっていった。
「……まぁ、いい……とにかく、私達にはオリジナルな技術が必要なんです……」
泰三はコンピュータをもう一度小突いた。お前のせいでえらい恥をかいたじゃぁないかと。するとまた、スピーカーから「……屋根が吹っ飛んだ……やーねー」という花香の声が会議室中に響いた。
「こうして、他社の技術と提携をすれば……。なんなんだ。誰なんだ?パソコンの音量はミュートにしておくように。くだらんことで会議を止めるな」
会長は少々イライラした口調で、再び話しを続け始めた。泰三は冷や汗を流しながら、真っ赤な顔をしてコンピュータを睨んでいた。なんだこのクソコンピュータ……、私に恥をかけというのか……と心の中で怒りをぶつけた。そして「……この会議が終わったらすぐにこのコンピュータなんか壊してやる……」と小さく呟いた時だった。
会長は話が終わったらしく、礼をした。すると、コントでも見ているかのように、会長のカツラが落ちてしまったのだ。しかし、会議に出席している他の社長達は決して笑うことはなかった。なぜなら、会長は自身でカツラであることを隠そうとはしていないが、他人に何らかのリアクションをされるともの凄い不機嫌になるからであった。そして会長は照れながらカツラを拾い、もと通りに頭に付け直した。その時。
「……ふとんがふっとんだ……」
と、会議室中に泰三の声が大きく響いた。
終
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