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そう、ご察しの通りであるが、このパソコンは水冷式でも空冷式でもなく、駄洒冷式という冷却方法をとっているのだ。これで無駄なファンを回す電力も必要がなくなり、無駄な水冷用の液体の分のスペースが要らなくなる。これはまさしく画期的な発明で、泰三の経営する子会社が一気に成長するチャンスでもあるのだ。パソコンの交換用部品を作ってきた泰三の会社にとっても夢のような発明だった。それも、社長自身が開発したものだから余計に話題にもなるはずだろうと吉朗は腹の中で考えていた。しかし、ここでもし失敗したら、というのも欠陥商品であった場合は、今の売れている部品ですら信用を無くして売れなくなってしまう。そう考えた社長はまずは実際に使ってみることはどうだろうと考えた。そうすれば欠陥だったとしても公に知られることはまず無く、むしろ改善出来るかもしれないと。そこで、泰三は秘書を呼び寄せた。
「ご用ですか?」
「見てくれ花香、私が考えた新しいコンピュータさ」
泰三は秘書の花香唯を自分の隣に呼んだ。泰三は得意げな顔で椅子にふんぞり返って目の前のコンピュータを花香に紹介した。花香は不思議そうな顔でコンピュータの様子を確認した。
「申し訳ないですが……コンピュータに疎い私は以前と比べても変わった箇所が見つけられません」
花香は申し訳なさそうに軽くお辞儀した。
「ははっ、まぁ仕方ないさ。外見はマイクが付いた程度だからな。私が変えたのはこのコンピュータの内部の部品さ」
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