非常識研究員の過信

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  この研究島の食堂は島のど真ん中にあり、全面ガラス張りの御洒落な建物だ。 …と言うか、まさか此処まで拘ってあるとは。コンクリート剥き出しの殺風景な食堂を想像していた俺は、正直驚きを隠せなかった。 「研究に限らず、アイディアってリラックスしている時に思い付く事が多いだろ?だからこの島は至る所に研究者をリラックスさせる為の拘りがあるんだよ」 と、翔曰わく。 「成る程な、だからエントランスにデカい水槽があったりする訳だ」 「ロボット研究所なんかもっと凄いエントランスだぜ、ゲイトの案でロボットのジャングル状態だ」 「そんなに褒めるなよ新藤、」 「褒めて無ぇって…」 お互い笑いながら、各々好きな物を注文し、プレートを手にテーブルへ着いた。 時間帯がずれている為に閑散とした広い食堂の中、一番窓際奥の観葉植物の側にあるテーブル。窓の外に広がる南国の砂浜が目と鼻の先にあり、見ているだけで心が和む。 「…成る程、リラックスな…」 「そう言う事。 この特等席は俺とゲイトが何時も使ってるんだぜ」 「尤も、昼食の時間そのものが合わないから、顔を合わせる事も無いけどね」 そう言いつつ、二人はコーヒーを啜る。 その姿が妙に大人びて見え、大学時代からの月日がそれなりに過ぎていた事に気付かされ、溜め息混じりに言葉が漏れた。 「…何だか、お前等すっかり変わったな…」 「そうか?そう言うゼロこそ…… 否、お前は変わってないな」 「何だよ翔?」 「昔から変わらず綺麗だって事だよ」 「何だ、気持ち悪いな翔… ?」 ふと、足元にふわっと何かが触れた気がした。最初は気に留めなかったが、それは二度三度とふわふわ触れ、その内ちょん、と何か尖った物がふくらはぎをつつく。 「…ゼロ、どうした?」 ふと、俺の顔が少し歪んでいる事に気付いた翔が、訝しげに顔を覗き込む。…この様子だと翔では無さそうだな。 …だとすると…。  
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