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「新藤さ、きみは僕に『言うことを聞け』と言って聞いてくれると思うかい?」
「お前なぁ… …確かにそうだけど」
「幸いな事に、Comaの美的センスは僕と同じで、ゼロの事を気に入っている様だし…唯一『島を出るな』と言う言い付けだけはちゃぁんと守ってるじゃないか?まるで好きな研究に没頭する僕の様にね。感覚はきっと僕と同じなのさ。
どうせなら此処は一つ、時々ゼロにComaを預けて教育して貰うってのは?」
「は?」
寝耳に、水…どころか、氷。
その言葉の意味を理解するのに数秒かかった俺とは対称的に、翔は腕を組んで少し考えた後、俺の方を見。
「…何言ってるんだよゲイト。確かに良い案だが、」
「お前…良い案って」
「只、それはゼロがこの島の研究員であればの話だ。今彼は部外者…変な事を吹き込まれたら」
「大丈夫だよ、だってゼロじゃないか」
…何だこの根拠の無い自信…。研究者ってこんなモンなのか??
だが恐ろしい事に、この一言を聞いた翔までも「…そうだな」と納得しやがった。
「ちょっと待てよ、俺の事考えてねぇだろお前等!?」
「この島で喋る猫と戯れ放題権は不満かい?」
「うッ…」
いちいち説得力のある例え方を…このゲイトって男は。
ちらっと、足元のComaへと目を落とす。
…耳を後ろへ寝せ、糸の様に細かった瞳孔をまん丸にし、じっとこちらを見上げている。そんな状態で
「…な?」
と小首を傾げられ
正直、一瞬俺の理性が飛んだ。
「… しょうがねぇな…」
「流石ゼロ!やっぱりきみは昔から変わらないな!」
嬉しそうなゲイトの言葉に、何が…と喉元まで出掛かったが、答えは翔の方から。
「ゼロ…今も綺麗な子と猫に目が無いのか…やっぱり変わってねぇな」
「うるせぇ!」
かくして、臨時飼育員(Coma限定)が決定した訳で。
何と無くゲイトの口車に乗せられた感が否めないが、…まぁ悪い話ではない。研究所公認で喋る猫と戯れられるのなら、寧ろ大歓迎だ。
…この時は、そんな軽いノリだった。
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