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月日は流れ、四月。
東京と千葉の境に設立されている方舟学園。
その校門前に一人の少年がいた。
方舟学園は男子生徒の制服をブレザーと学ランの二つから選択することができる。
少年は迷わず黒の学ランを選んだ。
「男なら学ランだろ、うん」
金髪の髪をかきながら旅行鞄を持ち直す少年。
寮に鞄預けておくか、と呟いた少年は校門を通過。
その数十分後。
少年は後悔していた。
「畜生。ここはどこだ……………?」
適当に歩けば寮の一つや二つ見つかるだろ、とか考えていた過去の自分を殴りたくなった。
「そもそも建物が多すぎなんだよ」
そう愚痴った少年は自分がどこにいるか、さっぱりわからなかった。
わかっているのは建物の中にいるということに、目の前に頑丈そうな扉があることか。
と、その時。
「ん?」
なにかが聞こえたような気がした。
鈴のように綺麗な声……………だったような気がする。
それでいて辛そうな声が―――
「気のせい、だよな……………?」
首を傾げた少年は念のため立ち止まり耳をすませてみた。
そして。
「そこッ! 今は入学式前だぞ!! 闘技場の練習用ノア保管室になんの用がある!!」
「うおっ!?」
後ろから襟を掴まれ、壁に叩きつけられた。
「貴様、見ない顔だな。新入生か?」
「しょ、しょうです……………」
顔ごと壁に押しつけられているため、くぐもった声しか出せなかった。
(こいつもよく聞けば綺麗な女の声してるっちゃしてるが……………さっきのとは違う気がするな)
「新入生なら体育館に行くぞ。入学式はもうすぐだしな」
「………………とりあえず壁に押しつけるのやめてくれねえか?」
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