プロローグ

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「『白虎』右腕部分限定展開」 「なっ―――!!」 朝霧の視界へと入った異常。 先程まで存在しなかったはずのモノ。 右腕のみを覆う純白の籠手。 それが純白の粒子をばらまきながら振るわれる。 空気が爆発した。 気がつけば朝霧の体がノーバウンドで数メートル吹き飛ばされた。 「し、死ん…………でない?」 すべては一瞬の出来事だった。 吹き飛ばされた朝霧は純白の粒子によって包み込まれ、受け止められていた。 五体満足であることから、直接殴られたわけではないようだ。 拳を振るった余波だけで人が吹き飛ぶ威力。 そんなモノは一つしかない。 ―――あの純白の籠手はノアの一部。 「なにか言うことは?」 「…………冗談にしてはやりすぎだ」 意識して軽く返せた…………と思う。 今だって笑えている…………と信じたい。 こういう性格なのだから仕方ない。 昔から弱いところを見せたくなかった。 それでいて負けず嫌い。 だからこそ、取り繕ってきた。 いつだって強がってきた。 だが、 「強がっちゃって。怖かったなら怖いって言えばいいのに」 昔から蛍には通用しなかった。 他の誰を騙せたとしても、目の前の少女だけは騙せなかった。 それはそうと、 「蛍がツッコミにノア使ってきたせいで強がることになったんだろうが」 「きゃーエッチスケベ変態…………とか言ってビンタしたほうがよかったかな?」 ニヤニヤと人の悪い笑顔を浮かべながら言う蛍。 「そっちのほうがマシだっての。首痛めたじゃねえか」 「それは女の子の胸を凝視した代償ってことで」 「高い代償なことで」 「そう? 大安売りだと思うけど」 「あーそうですね。お買い得ですね」 「そーやって適当に返すの、禁止」 ぷくっと可愛らしく頬を膨らませた小手川はそっぽを向いて、 「だって、ようやく会えたんだもん」 「……………………蛍が手紙に住所書けば、すぐにでも会いに行ったんだがな」 蛍がこっちを見ていなくて助かった。 見られてたら照れ隠しに答えたことがバレそうだったから。 再会を喜んでいたのは、俺だけじゃなかったということが叫びたいほど嬉しいのだから。
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