プロローグ

9/9
前へ
/120ページ
次へ
「………………ほんと?」 「ああ」 「………………うそじゃないよね?」 「ああ」 「………………なんでそう言えるの?」 「蛍が俺の友だちだから」 「………………なにも知らないじゃん」 「だからどうした。蛍が俺の友だちだってことは変わらねえだろ」 「………………でも、だって、わたしは……………ッ」 「ったく。なんて顔してやがる」 そう言った朝霧は小手川のほうへと歩み寄る。 腕を伸ばせば触れられる距離まで近づいた朝霧は肩をすくめて、 「せっかく綺麗な顔してんだ。涙でグチャグチャにしてんじゃねえよ」 「だって……………だってぇ」 ボロボロと涙がこぼれていた。 朝霧が手で拭ってやっても、次から次へとこぼれていく。 「遅いんだよ、きょうすけぇ……………もう、手遅れなんだよぉ」 「知っちゃこっちゃねえな」 涙は止まらない。 これがなにに対する涙なのか、朝霧にはわからなかったが。 状況なんて、なに一つわかっていなかったが。 それでも。 「俺がなんとかしてやる」 無責任な言葉だった。 これこそちっぽけな高校生の戯れ言だと理解していた。 だからと言って黙っているつもりはない。 これは楔。これから先、なにがあろうとも。 「俺がなんとかしてやるから。だからいい加減泣き止めよな」 「………………信じてるから」 消えてしまいそうな声だった。 だが、朝霧にはしっかりと聞こえていた。 しっかりと届いていた。 「おうっ! 俺に任せろ!!」
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加