せめてコーヒーフロートにしてくれ

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この有線ではなぜか10年前がマイブームらしい。 高校の頃に買った曲が次から次へと流れていく。 今風の洒落たカフェで聴くには少々ちぐはぐな感があった。 汚い実家の自室や部室を思い出す。 まあいい。どうせ全部洋楽だ。ほとんどのやつはわかりゃしない。 しかし俺の前に出されたコーラ・フロートは、どうがんばってもコーラ・フロートで、コーヒー・フロートあたりにごまかせそうもない。 別に甘いものは嫌いじゃない。しかし、こうまで甘ったるいものを飲みたいとも思わない。 じゃあなんでそんなものを頼んだかというと、対面に座る女のせいだった。 女、シルアが「にあわなさそう」という理由で勝手に頼んだ。 俺の憮然とした顔を見ると指を指して笑い転げたのが2分前。 シルアは甘ったるい香水の匂いを、髪が揺れる度に振り撒きながら、ひどく甘ったるい声で話す。明らかに作った声だ。ソーシャルゲームについて話しているが、そのしゃべり方も甘ったるい。 メール風に表記するなら「あとぉ、ひとっでぇ✨コンプ✨なんだぁ❤❤❤」という調子。 ネットなら気にもならないが、リアルでもこの調子だとうんざりしてくる。 リアルで会う約束をしたのが三日前。その時は喜んだが、今じゃ上の空。話よりBGMを聴くのを優先している有様だ。 シルアはお互いやっているゲームについて話続けている。 俺はぼんやりとテキトーな相槌を挟む。ほとんど作業に近い。 シルアの顔を眺めながら、写メの加工技術の進歩に内心舌を巻く。 シルアは写真では高校生くらいの若々しさだったが、実物は20は軽く越えていてしかもどこか老けているように見えた。 しかも格好がそれこそ高校生じみていて、それが痛々しさに拍車をかけている。 完全に失敗した。後ろではJOJOのleave(get out)がかかっている。俺が出て行きたい。
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