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「待たせて、ごめんね」
彼は「もういいの?」と気遣いの言葉をかけてくれた。本当の事を言い出せない罪悪感と、いつもつきまとう漠然とした不安。それを圧し殺して、私はちゃんと笑えているだろうか。
話の続きを聞きたい。聞きたくない。聞かなくちゃいけない……。
「ごめんね」から始まった言葉。
晩秋の、あまり高くはないとは言え山の頂上付近を吹く風は冷えている。
彼の額に滲む汗は、とても場違いで……。
少し気の弱いとこのある彼は、きっと別れを自分から告げたことがないのだろう。
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