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霞む目を彼女に移し、やっとの思いで言葉を紡いだ。
「僕、気付いてるんだ」
「えっ……何?」
やっと二人の視線が絡まった。
「僕より大切な人要るよね」
「そっか。知ってるんだ。だからか」
「それでも僕は……」
僕の言葉を遮って不自然に明るい声が聞こえた。
「ごめんね、悩ませちゃったね。こんな私を好きになってくれてありがとう」
そのごめんねの意味を考えながら、僕の腕は彼女へと伸びていた。抱き締めた彼女は震えていて……。
彼女の首にフワリと巻かれたラベンダー色のストール。その両端を掴むとゆっくりと引っ張る。
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