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岡山県岡山市某所
それはどこか高い所。
山の中だった。
大きな吊り橋の真ん中辺りで屈みこんだ小さな女の子が手すりから身を乗り出していた。
彼女が手を伸ばすのは赤いスカーフ。
風にあおられて落としたのか吊り橋を支えるワイヤーに引っかかっている。
懸命に伸ばしても彼女の小さな手は届かない。
それどころか吹き降ろす風に揺られ今にも飛ばされそうだ。
強い風が吹いた。
スカーフが宙へ待った。
女の子はあっと言って両手でスカーフを掴もうとした。
体を支えていた腕がなくなり、バランスを崩した女の子は吊り橋から落ちた。
落下したショックで気を失った女の子は川原で目を覚ました。
訳がわからないらしくしばらくきょろきょろしながら背中をさすっていた。
右手はしっかりと赤いスカーフを握ってずっと離さなかった。
大丈夫? と声をかけた。
女の子は頷いてから泣き始めた。
恐怖がその時になって蘇ってきたのかもしれない。
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