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きっぱりとした口調ながら顔つきは不安そうだった。
「先ほど言いそびれたことですが。
……お願いです。
あなた方の暮らしている所に私もいさせてください」
そのまま膝をついて服従の姿勢を取った。
ロットが慌てて駆け寄る。
「こんなとこで何してんだよ! そこまでする必要ねえって。
けど、俺んとこで暮らすよりあそこの方がずっと良い暮らしじゃねえか。
なんでわざわざ出てぇんだよ。
逆に俺が住みてぇよ」
ロットはどこまでも正直だ。
「私はあそこでは邪魔者ですから。
私がいると彼らの関係がぎこちないものになってしまいます。
どうしても危機感が強くなってしまいますから。
この間は口論している所を見てしまいました。
私のせいでエルーさんがせっかく掴んだ幸せが壊れてしまう。
もうそんな思いはしたくないんです」
どうして気づかなかったのだろう。
彼女も同じだ。
誰かを無口にしてしまう自分の存在がうとましくていたたまれない。
シャスカのもとを飛び出した自分と同じで、彼女もまた一人で強く生きているロットを頼っている。
彼女はエルーに支援されて当然などとは微塵も考えていなかった。
「とにかく立ちなよ、な?」
優位な立場にあるはずのロットがおどおどしてしまい、珍しく優しい声音で話しかけているのがなんとなくおかしい。
しかしイゼは頑として聞き入れない。
「認めていただけますか? もし邪魔になると言うのなら遠慮なくおっしゃって下さい。
私も新たな住まいを見つけなくてはなりません。
おそらくミースさんと同じ暮らしになるとは思いますが」
ほとんど脅迫だ。
そして非常に覚えがあるセリフでもある。
ミースの生活ぶりを否定しているロットがそれを許すはずはない。
同じような言葉で二度も追い詰められるロットが哀れだ。
同じ方法で彼を苦しめた立場としては同情する資格はないが。
困りきった様子のロットが近づいてくる。
このお人よしの戦士は彼女も救うだろう。
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