* 白 * 約束は?

100/121
前へ
/232ページ
次へ
「お前が言うなよ。 って言うかお前がいなければもうちょっと広くなって、お前さえいなければなー」  それまで大人しくしていたロットに恨みがましい眼で見られる。 いちいち口に出さなくてもそう言いたいことはわかっていた。 「私のせいで王子を追い出すわけにはまいりません。 その時は私も出て行きます」  イゼがまた毅然とした装いを取り戻しきっぱりと言い放った。 なんとも助かる発言だ。 ロットは「えー?」 と情けない声を出して眉を曲げた。 それを見てイゼが笑う。  今日はイゼの意外な一面を多く見たつもりだ。 張っていた虚勢が薄れたのだろう。 そう思わせる解放された笑顔だった。  前の住人達が不用品を置いていった物が保管してある空き部屋から、イゼ用にできるだけ清潔そうな毛布を取ってきてもう寝ることにした。  元々電灯などない暗い部屋に寝転がり天井を見上げ、今日一日を振り返ってみた。 本当に色々なことがあった。 ほとんど思考停止していた半年間に比べ随分と時間が濃い。  一番驚いたのはシャスカのことだ。 彼は父の勅命で世話係になったはずが、王族を護る誓いを立てていない。 もしくは守る気がなくなっている。 誓いとはそもそも個人の意思で勝手に制約していいものではない。 可能ではあってもしてはならないことになっている。 王宮関係は特に厳しく、既に誓いをあげたものが王宮に召抱えられることはまずありえない。 というよりも王族を護る誓いを立てることで、初めて正式に王宮に仕えることができる。 シャスカが例外になる理由はどうしても思い浮かばない。 誰がどんな誓いを立てたか。 それは公式に管理されている。 シャスカの扱いは、そこではどうなっているのだろうか?  考えたくない。 可能性が高いのは長い人間界の暮らしで王宮など忘れ忠誠心など消え失せてしまった場合だ。 長年放っておいて勝手かもしれないがそれは悲しい。 もしそうなら なぜ半年もの間不平も言わず世話してくれたのだろう。 あれが全て義務から来る演技で、そんなことも知らずにふんぞり返っていたのでは自分があまりにも愚かに思える。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加