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「……なぁロット」
結局頭であれこれ考えても心は決まっていた。
これから何度悩むとしても結論は一つだ。
「余はシャスカを信じてみることにする」
何かしら理由があるはずだ。
誓いの力が発動しなかった理由が。
絶対に納得する理由が。
ロットからの返答を待ったが、いつまで待っても返らないので焦れて寝返りを打ち睨み付けると、ぽかんと口を開け既に眠っているようだった。
イゼには聞かれたかもしれないが、特に構わないことにする。
彼女も事情は知っているのだから。
しばらくしてから、別に何がどうしたというわけではないが体を起こしてイゼを見た。
一種の胸騒ぎがあったのかもしれない。
それが何か考える前に体が反応していた。
イゼは「新入りだから」
と言って玄関辺りで寝ることになっていた。
なので足元の毛布にくるまって寝ているはずだった。
が、転がっている毛布にその膨らみが認められない。
不穏な空気が流れる。
が、生真面目で正直な黄族にスパイができるとは思えない。
神経を集中してイゼの気配を探ってみた。
こういったことは得意ではないが、イゼもどうやら気配を断つことは特別上手ではなさそうだ。
すぐに探り当てた気配は真上。
天井その向こうにあった。
一旦建物の外に出てから周囲に気を配り屋根に飛び乗る。
瓦を踏む音に気づいてそれまで夜空を見上げていたイゼがこちらを見た。
どうも、と言うような様子で軽く頭を下げる。
薄闇に映えて寂しげな表情が物憂げで美しかった。
持って来ていた毛布を投げて被せてやる。
感謝はさっきより少しだけお辞儀が深かった。
「なにをしているんだ?」
「なんだか……落ち着かなくて」
「それはそうだろうな」
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