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親の所に連れて行こうと考えそう言ったが女の子は首を振った。
帰りたくない。
パパが知らないおばさんと仲良くしてるから帰りたくない。
この子は母親を亡くしている。
そう直感した。
自然に自分と女の子が重なった。
そこから先はよく憶えていない。
帰ろうとすると泣き出すので弱り、仕方なく日が沈むまで山の中で遊んだ。
最初は戸惑ったが、しばらくすると自然に楽しんでいる自分がいた。
日没後暗闇に親しんでいる体は動かしやすくなったが、女の子が疲れたというので幹に背中を預けて休んでいた時、何か近づいてくる気配を感じた。
すぐに聞こえた叫び声に反応して女の子が立ち上がった。
親が心配して捜しに来たのだろう。
そう思った。
つまり楽しい時間は終わりだ。
本当に楽しかった。
それまでの人生を埋め尽くしていた窮屈さがまったくなかった。
駆け出そうとする女の子の手首を捕まえ、驚いて丸くなっている目を見つめて約束をした。
いつかまた会って、一緒に遊ぶ約束。
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