* 白 * 約束は?

3/121
前へ
/232ページ
次へ
 親の所に連れて行こうと考えそう言ったが女の子は首を振った。 帰りたくない。 パパが知らないおばさんと仲良くしてるから帰りたくない。  この子は母親を亡くしている。 そう直感した。 自然に自分と女の子が重なった。  そこから先はよく憶えていない。 帰ろうとすると泣き出すので弱り、仕方なく日が沈むまで山の中で遊んだ。 最初は戸惑ったが、しばらくすると自然に楽しんでいる自分がいた。 日没後暗闇に親しんでいる体は動かしやすくなったが、女の子が疲れたというので幹に背中を預けて休んでいた時、何か近づいてくる気配を感じた。  すぐに聞こえた叫び声に反応して女の子が立ち上がった。 親が心配して捜しに来たのだろう。 そう思った。 つまり楽しい時間は終わりだ。  本当に楽しかった。 それまでの人生を埋め尽くしていた窮屈さがまったくなかった。  駆け出そうとする女の子の手首を捕まえ、驚いて丸くなっている目を見つめて約束をした。 いつかまた会って、一緒に遊ぶ約束。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加