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異性二人とあんな狭い部屋に押し込められまともな神経でよく眠れるわけがない。
「ロットさんは?」
「ぐっすりお休みだ。
今日は色々あったからな」
イゼがすみませんと元気の無い小さな声で言った。
初対面からの印象ではもっとふてぶてしい奴かと思っていたが、今はしょぼんとしてしおらしい一面を見せている。
「お前が来たせいじゃない。
現に奴は能天気にぐーすか眠っているんだからな」
しばし沈黙の時間が流れる。
彼女を納得させられなかったようだ。
「一つ気になることがあるんだが」
「なんですか?」
努めて明るく、と言った調子で振り向く。
虚勢が剥がれ、弱さが見えてきた。
見知らぬ世界に飛び込んで、この世界が、故郷の世界がこれからどうなるかに大きく関わる責任を負わされて。
彼女はこのまま己を律することもできないほどに弱くなっていくのだろうか。
街灯が点滅し、時々彼女の顔をくもらせる。
「……答えたくなければ答えなくとも構わない」
苛つくことなくイゼは同じ言葉を繰り返した。
嫌な質問をされる、というような予感は微塵もないようだ。
「エルーが左遷でこちらに来たというのは聞いた。
ならばお前は? 一体どんな理由で今ここにこうしているんだ?」
うつむいてしまった。
どう答えようと悩んでいるというよりは単純に落ち込んでいるようだった。
「私も……私もエルーさんと同じで左遷です。
ただ、私の場合はエルーさんのように優秀過ぎたからではなく、無能だったからです。
ドジで、迷惑ばかりかけていたから」
寂しい独白が終わり、風が吹き抜けた。
この風が何もかも払ってくれたらいい。
「まあ、他国に比べ厳格な黄国だ。
そこにおいてドジだと言っても、おそらくロットよりはずっと優秀だろう」
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