23人が本棚に入れています
本棚に追加
(なにもこんな時に!)
アルバイト中、まったく無警戒なところへの登場。
部屋で待たせてあるイゼが無事か心配だ。
仕事中だという意識は消し飛んでいた。
「なぁなぁ、もっと働けばもっと良いとこに住めるんじゃねえか? 家具とか揃えてよー、良いモン食ってよー」
後ろから間の抜けた声で目的を忘れた発言をしながらロットが近づいてきた。
アリオから目を離せない為確認できないがきっと弛緩した顔をしているに違いない。
「交代しようぜ。
ちょっと寝とけよ。
今日から昼も働くぞ」
幸せなロットがようやくアリオの存在に気づいた。
しかし無防備に近づいていく。
注意を呼びかける声も出ない。
「すいませーん、工事中なんすよ。
すいませんけどそっち――」
アリオの赤い瞳が動いてロットを見た。
灰と赤の眼がぶつかり合う。
その瞬間、ロットは飛び退いた。
「てめぇ! なんなんだいきなりなにしに来やがった!」
ロットの額に角が現れその勢いで被っていたヘルメットが後方に弾け飛んだ。
アリオはまったく動じない。
ロットが来てくれたおかげかアリオの注意がそれたせいかわからないが、ようやく体が動かせるようになっていた。
躊躇はしない。
まず角を出した。
ロットのような赤族とは違う、耳の後ろから上向きに生えた二本の金の角。
これこそ白族の象徴だ。
「物騒な用件なら遠慮してもらいたいものだ」
心底戦いたくない。
力の差は明らかだ。
不明な特有の力なしでも黒族は他種族を圧倒する。
二人がかりで襲い掛かったとしてもどちらかが、下手をすれば両方共命を落とすことになるだろう。
この状況で戦っても勝ち目はまるでない。
(せめて誓いの力が使えれば!)
半年間怠けていたことが悔やまれる。
あの頃まさかこうなるとは悪夢にも見はしなかった。
いざとなればシャスカが助けてくれる。
それで当然と思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!