23人が本棚に入れています
本棚に追加
現在、ロットと二人で角を現している以上気配は丸出しだ。
きっと起きて帰りを待っているイゼが、もしかしたらシャスカが駆けつけてくれるかもしれない。
問題は助けが来るまで持ちこたえられるかどうかだ。
「そう、殺気だたなくてもいい」
アリオがゆっくりと口を開いた。
妙に粘り気のある声は相変わらずで、首の後ろを汚れた舌で舐められているような気分になる。
「今、ここで襲うつもりはない。
今すぐには」
アリオは角を出していないが油断はできない。
黒族はあらゆる点で未知だ。
外交に関してもたった一人の外交官が存在するだけで、普段戦場以外で姿を見せる黒族と言えばその外交官ただ一人だ。
実際に直接会ったのはアリオが初めてだった。
角はそのまま、身構えたまま。
いつでも飛びかかれるよう、逃げ出せるよう。
「なら、何しに来たんだよ!」
ロットが勇ましく吠える。
恐怖などまるで感じていないようだ。
彼の場合襲いかかる心づもりが固まっているように見えるので頼もしくもあり危なげでもある。
「言っている。
争うつもりはない。
少し様子を見に来ただけだ。
白族の王子殿がどのよう
に身をやつしこの世界で凌いでいるかをな」
「ふん、見ての通りだ。
満足したら失せろ」
吐き捨てる。
本当にそれだけの用で帰ってくれるなら願ってもないことだ。
「お前達は仲良くしているくせに、仲間外れにするつもりか?」
「一度も和合しようとしなかったお前たち黒が言えた義理か! お前たちが起こした争いがどんだけ不幸を作ったか考えたことはねえのかよ!」
ロットが叫ぶと基本的に無表情な黒族の顔つきに、表情の色が浮かんだ。
不敵に、不気味に笑う。
最初のコメントを投稿しよう!