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「あの状況でお前に落ち度はなかった。
ろくに身動きもできなかった余こそ恥じるべきだ」
「今までさんざいきがってたくせにてんであいつに敵わねえ。
こんなに弱いんじゃなんで俺ここにいるかもわかんねえよ」
たったあれだけのやりとりでロットの心は折られてしまった。
アリオはそれだけの実力を見せ付けた。
「でも、心の準備とか、万全の態勢で挑んだら結果は違ったでしょう? それに私たちだっているんだから――」
取り繕うような脆い笑顔で、フォローを入れようとしたイゼが毛布の隙間から覗いたロットの視線で止められる。
「お前だって軍人だろう? 心の準備なんてありえねえんだよ。
おっぱじめんのに相手の許可求める奴なんて戦場にいるのか? それに俺達みたいなのが何人集まったってあいつには勝てねえよ。
へなちょこの軍人二人と、誓いも忘れたような白族。
これでどうやって、勝てって言うんだ?」
「へなちょこって……」
イゼが明らかに傷ついた顔をして、ロットはそれを見てやるせなさそうに唇を噛んだ。
「……八つ当たりして悪かった。
あいつが怖くてしょうがねえんだ。
勝つ方法が思い浮かばねえ。
どう考えてもあいつはやる気だ。
俺達が殺されて、そしたら俺らの国は、この世界はどうなる?」
折れてしまった鋭利な刃は不規則な刺で誰彼なしに傷つける。
その刃を、ロットをイゼがそっと抱き締めた。
「なんとかしないといけないんです。
だから、きっとなんとかなりますよ。
あなたも私もちゃんと故郷に帰れます」
ロットはされるがままになっていた。
ぼうっとした目つきで、かなり近い距離のイゼを見つめている。
「あなたが元気にならないと、大切な人を護れませんよ?」
「――お前が好きだ」
「…………は?」
このタイミングで言うのかと驚いていると案の定イゼも受け止めきれていないようだ。
抱きしめていたロットから少し体を離し混乱しているイゼに、ロットは容赦しなかった。
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